パンダの赤ちゃんは親のうんちを食べるって聞いたことありますか?他にもコアラの赤ちゃんも親のうんちを食べると言われています。共通するキーポイントは「腸内細菌」。そこで今回は腸内細菌と動物の関係をご紹介したいと思います。
パンダの赤ちゃんは親のうんちを食べると言われています。これは親のうんちに含まれる、親の腸内細菌を自分の体に取り入れるためと考えられています。
そこまでして親の腸内細菌が欲しいのはなぜでしょうか?パンダが「笹」を食べる姿を見たことがあるかと思いますが、実はパンダ自身は笹を消化できる「消化酵素」を持っていません。笹の消化酵素を作り出せる、腸内細菌により行われているのです。
ところがパンダにとってとても大切なその腸内細菌は生まれた時には腸にいないのです。そこで親の腸に住み着く腸内細菌を自分にも住んでもらうため、親のうんちから摂取しているのですね。
同様にコアラも同じです。コアラの主食であるユーカリの葉は有毒な物質を含んでいるため他の動物は食べられない植物です。コアラが食べられるのは、ユーカリの毒を無害化できる腸内細菌がいるためです。
コアラ自身も無毒化できる酵素をもたず、生まれた時には腸内細菌もいないので親の腸内細菌が必要になるのです。
それでは人はどうでしょうか?実は人も腸内細菌がいないと生きていけないほど大きな役割を担ってもらっています。
例えば、野菜などに含まれるセルロースを消化できる酵素を持っていなかったり、ビタミンやアミノ酸の合成も人体の酵素だけではできず、腸内細菌の働きにより初めて行われます。
たまに腸内細菌が腸に「寄生」すると言われたりもしますが、人間も助けられていますので「共生」するのほうが適切でしょう。
人は大事な腸内細菌をどうやって獲得しているのでしょうか?
赤ちゃんがお母さん・お父さんのうんちを食べる…わけではありませんよね(^_^;)
では生まれた時から備わっているのでしょうか?
実はおなかの赤ちゃんの腸には腸内細菌はいないと言われています。
生まれる時にお母さんの産道を通り、外気に触れる時に菌と赤ちゃんが初めて接点を持ち、腸内細菌も住み着くようになると考えられています。
一般に大便の約半分が腸内細菌の死骸と言われます。生後直後の赤ちゃんの便には腸内細菌がいないそうですが、1日経つともう腸内細菌が認められるということでした。
その後、腸内細菌は生活環境の中でどんどん内容が変わっていきます。その腸内細菌の集まりを腸内フローラと言ったりしますが、腸内フローラは親子でも異なります。
食べ物やいろんな生活習慣等により腸内フローラは変化していきますのでよい状態にすることが大切です。
この腸内フローラはメタゲノム解析により近年急速に研究が進み、消化や栄養合成以外にも様々な働きが分かりつつある、注目の分野となっています。
(腸内フローラについては「腸内フローラの働きがすご過ぎる!」もご参照ください。)
自分の腸内フローラを良い状態に変えることができればいろんな疾病もよくなる可能性がある、ということで実際に欧米では便微生物移植が行われています。
便微生物移植とは、端的には健康な人の便を患者の腸に移植する、というものです。お尻から入れる方法もあれば、口から管を通して入れることもできるそうで、実際に欧米で行われています。
直接触れないにしろ、他人の便を口から入れるというのはかなり抵抗感はありますが、有効な治療の手段であればやむを得えないかもしれません。
ここで最初に戻ると、パンダやコアラは今ようやく人間が実施しはじめた「便微生物移植」を長い歴史の中で体得していた「先人」なのかもしれませんね。
ちなみに日本ではまだ「便微生物移植」は臨床実験中とのことですので、オリゴ糖や発酵食品を食べて腸内フローラを整えましょう。
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