当店は自然食品のお取り扱いをして40年あまり。少し高いですが安心・安全でおいしい食品を販売しています。ではそもそも自然食品って何でしょうか?自然食品ではない食品、いわゆる反対語は何でしょう?自然食品と今の日本の食事情についてご紹介します。
まず自然食品とはどういう食品でしょうか?
厳密な定義はないですが、市販の食料品よりもより自然に近いと考えられる食品のことです。
例としては
・食品添加物を使用していない加工食品
・昔からの製造方式で生産している醸造食品
・農薬や化学肥料などをできるだけ使わずに栽培された農産物
などです。
こう見てみると、ちょっと疑問が浮かびませんか?
自然食品とは言うもののいわゆる「普通の食品」なのではないかと。
そうなんです、よく考えると普通の食品なんですね。
・食品添加物を使わない食品 → 普通
・昔ながらの製法で作る食品 → 普通
・農薬や化学肥料を極力使わない食品 → 普通
ではなぜ普通の食品が自然食品と呼ばれるようになったのでしょうか?
それは昔ながらの製法で作る普通の食品が珍しくなったということです。
となると次の疑問は昔ながらではない、「今の製法で作る食品」は何食品なんでしょうか?
「自然食品の反対語」は何でしょうか?
自然食品の反対語、いろいろ調べてみましたがありませんでした(^-^;
ただ自然の反対・対義語は「人工」、「不自然」≒「異常」ですので当てはめると
「人工食品」、「不自然食品」、「異常食品」
が自然食品の反対語、つまり「今の製法で作った食品を表す名前」と言えそうです。
人工食品、不自然食品、異常食品と聞くとかなり衝撃的な名前です。
でも今の食品の多くは以下のような食品が蔓延しているのが実態なのです。
・自然界には存在しない合成調味料を大量に使用
・まったく発酵させてない発酵食品
・何日たっても腐らない食品
そう考えると衝撃的な名前もそんなに外していないように思えます。
では実際にどんな食品があるのかご紹介します。
しょう油は本来、大豆・小麦・塩を原料に、麹菌を入れて数カ月間発酵させて作ります。
この発酵の過程で、複雑な反応が起き、うまみ成分であるアミノ酸や褐色(黒色)の色素などが生まれます。
この方法はとてもおいしい醤油ができますが大変な手間暇と時間が必要です。
その分お値段もそれなりになるのですが、職人さんの苦労やそのおいしさ・安全面・将来に渡って受け継いでほしいなどなどを考えると、適正な値段で販売することはとっても大事なことだと思います。
しかし今の日本は品質よりも価格を重視し、より安い醤油が売れます。
お客様がより安い醤油を求め、企業も安い醤油を開発する、というサイクルです。
では企業はどうやって安い醤油を実現しているのでしょうか?
まず使う大豆に秘密があります。
国内で消費する大豆のうち、約3分の2が油を目的としています。
いわゆるサラダ油などでよく使われているのが大豆油です。
油が目的ですので、大豆から欲しいのは油。
つまり、「油を抽出して残ったもの」は不要物ということになります。
この大豆から油を取り除いたものを脱脂大豆といいます。
脱脂大豆といっても大豆は大豆。豊富なたんぱく質を含んでいます。
しかも普通の大豆に比べて安く手に入ります。
そこでそれを醤油づくりに使おうということになりました。
脱脂大豆には大豆の皮なども含まれているため、醤油づくりに適するように大豆の皮などを取り除くなど加工を施したものを「脱脂加工大豆」と呼びます。
今は多くの醤油は脱脂加工大豆から作られています。
脱脂加工大豆を使うことで安く作ることができ、また捨てる食材も減る、油がないので短時間で発酵できるなど多くのメリットがある一方で、脱脂加工を行う時に使う加工補助剤(主にヘキサンという有害物質)の残留や大豆本来の風味が損なわれるなどのデメリットも挙げられています。
脱脂加工大豆を使うことについて賛否いろいろあります。
ただ、今の醤油の82%は脱脂加工大豆から作られている(※)ことは事実ですので、他人事ではなく当事者として一回考えてみていただきたいと思います。
※しょうゆ情報センターWEBページより
脱脂加工大豆から醤油を作りますが、より安くするには「早く」作る必要があります。
同時に本醸造に敵わなくても「それなりにおいしさを感じる」醤油にしなければなりません。
醤油のおいしさの秘密は麹菌の発酵により生まれるアミノ酸。
しかし発酵には時間がかかります。
そこで考えられたのが、脱脂加工大豆のたんぱく成分に塩酸を加えアミノ酸液を作ることです。(加水分解処理といいます)
これをもろ味を絞った液(生揚げ醤油)など醤油の元成分に混ぜると旨みが加味された醤油ができます。
発酵する過程がないため「早く」作ることができ、それにより「安く」なります。
このような作り方をする醤油を「混合方式」と呼ばれています。
醤油の裏ラベル等に「混合」と書いてあったらこの作り方をしています。
ちなみに私が近所の文房具屋さんのセールで買い物した時にいただいた醤油がこちらでした。
(私は不要でしたので他の方に差し上げました)
安い醤油を実現するには「大量に売れること」や「廃棄」が少ないことも要因となります。
大量に売れれば生産コストが下がり、廃棄が少なければ廃棄コストやロスも少なくなるからです。
大量に売れるには、やっぱり「おいしさ」と「見た目」が大事です。
見た目というとピンと来ないかもしれませんが、極端な例だといくら味が醤油でも緑とか赤い醤油は選ばれないのです。
(※テレビの企画で作った(?)「青いカレー」は売れたみたいですが…)
「おいしさ」の面では、アミノ酸液で補填できるといっても、それだけでは発酵の過程で生まれる複雑な味にはかないません。
そこで、「ブドウ糖」や「甘味料(人工甘味料)」などで味を調えます。
「見た目」の面では、生揚げ醤油は、長期間発酵の醤油が持つきれいな黒褐色よりも薄くなるため「カラメル色素」で色を加えます。
「廃棄ロス」の面では、長期間保存できれば売れ残りが減り廃棄量を減らすことができるため、「保存料」を加えます。
私が近所の文房具屋さんでいただいた醤油にもしっかりと「ブドウ糖」「甘味料」「カラメル色素」「保存料」と記載されていました。
上手に添加物を利用することで、醤油を安くすることを実現していると言えます。
自然食品の反対語というテーマから、安く売るためにいろんな企業努力により今時の製造方法を駆使して作られている醤油を例にとってみました。
いい悪いは別にして、やっぱり自然食品はおいしいなと僕は感じますし、多くの方もそう思ってもらえるのではないかと考えています。
自然食品の専門店で買い物をしましょうとは言いませんが、スーパーで買い物をする時に原材料を見る癖をつけて、より自然な食品を味わってもらえるといいなと思います。
ただ、一度味わうと元に戻れなくなるかもしれませんのでそこだけ注意してくださいね(^^)
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