2018年1月14日放送のNHKスペシャル「人体」や1月26日発売の週刊ポスト、翌27日の週刊現代で「腸」や「納豆」の特集がありました。今回は後編として、「腸と免疫」の関係についてご紹介したいと思います。
腸と言えば、一般に食べ物を消化・吸収し、残りを排泄する臓器だと理解されていますが近年それ以外の大切な働きも知られるようになりました。
その代表的な働きは「免疫」です。
実は人体で最大の免疫器官が腸なのです。
免疫はインフルエンザやがん、アトピーや花粉症まで、あらゆる疾病に関係するとても大切な働きです。
しかし、なぜそんな大切な働きが腸にあるのでしょうか?
そこで腸の免疫のついてみてみましょう。
食べ物は口から入った食べ物が食道・胃を通り、腸を経て肛門から排泄されます。
この際、食べ物や外気と一緒に病原体などの異物も付着してくるため、口~腸~肛門までの消化器はその他の臓器よりも危険にさらされています。
その消化器官を通る食べ物は分解され、その大半は腸から”体内”に吸収されます。
つまり、異物が腸から吸収されるとその他の臓器に影響を与えてしまう、最後の砦であるため、免疫細胞の多くが腸に集中して体を守っているのです。
どのぐらい多いかというと、人体に存在する免疫細胞の実に60%~70%。
こう考えると、腸が単なる消化器官と言われてしまうのはかわいそうというものです。
日本人の多くが悩む花粉症やアトピーはアレルギー症状です。
アレルギーとは、免疫細胞が花粉などの無害の敵への過剰反応によって引き起こされる副作用として知られています。
従来、アレルギー症状への根本治療は不可能とされ、アレルギー箇所で多く分泌され様々な影響を引き起こすヒスタミンを抑える対処療法が一般的でした。
しかし、腸研究が進み、免疫の過剰な働きを正常化させる可能性が出てきました。
その鍵を握るのが腸内細菌です。
腸は細菌と共存する唯一の臓器で、腸と腸内細菌がお互い補いって共存しています。
例えば、腸は腸液などの消化液を出し食べ物を消化しますが、それでは分解できない食べ物もあります。そんな時は腸内細菌が分解を助けてくれます。
外国人は海苔が消化できないと言われますが、日本人には古来から食してきた結果、腸に特有の腸内細菌がいるので消化できるのです。
一方の腸内細菌もメリットがあります。
例えば腸内細菌の中には酸素があると生存できない嫌気性という菌がいます。大腸にはほとんど空気がなく、温度やその他環境も適しているので、大腸は生きる環境に適しているのです。
腸内細菌は自分が生きるためにする活動(生体活動)の副産物として消化酵素などの有用な成分を出します。これがとっても大切な働きをするのです
つまり、腸内細菌を上手にコントロールできれば、腸はもっともっとその機能を発揮することができると言えるのです。
そんな腸内細菌の中でとある腸内細菌が、花粉などの無害な敵にも過剰に攻撃する免疫細胞の働きを抑える物質を多く分泌するという研究結果が示されたため、アレルギーやリウマチなどの根本治療に期待されているのです。
その他に、糖尿病や太りやすさ、性格や薄毛にも関係しているとされ今も研究が進んでいます。
腸内細菌が免疫やその他の多くのことに深くかかわっていることがわかったとして、では何をすればいいのでしょうか?
最も効果的とされる方法は健康な人の腸内細菌を自分に移植することです。
便微生物移植と言われる、健康な人の便から腸内細菌を抜き取り、無菌にした患者の腸に入れるという治療ですが、今の日本ではほとんどできません。
身近でできることはやっぱり食べ物です。
しかし腸内細菌はとても複雑でこれだけ摂ればいいといった食品はありません。
納豆菌やポリアミンを多く含む納豆、善玉菌が含まれる発酵食品、食物繊維を多く含む食べ物、腸内細菌のえさになるオリゴ糖などをバランスよく摂り、腸の秘めたる力をいっそう引き出してあげましょう。